
今回は、個人的な経験ではありますが、終活がもたらす遺族への安心感について、相続の専門家である立場から感じたことをまとめてみました。
※個人の経験に基づく内容ですので、あたたかい気持ちでお読みいただければ幸いです。
1.母の終活で助かったこと
私の母は、最期の2年間を施設で過ごしましたが、それまでは家族と同居していました。
日常的に家族がそばにいたこともあり、母自身が元気なうちにいくつかの「終活」を進めてくれていました。
これが、後の相続手続きで大変ありがたかったと強く感じています。
2.証券口座の整理とリスク回避
特に印象に残っているのが、証券会社の口座整理です。
コロナ禍が始まる少し前、母は自ら「証券会社の取引をやめる」と言い出しました。
高齢になり、住所や氏名を正確に記入することが難しくなってきた自覚があったのでしょう。
手続きは一緒に苦労しながら進めましたが、この判断が後の手続きに大きく役立ちました。
有価証券(株式・投資信託など)は、
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価格が日々変動する
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株数が割り切れず、相続人間で平等に分けにくい
という特徴があります。
これがもとで、遺産分割協議が長引いたり、トラブルに発展したりするケースも珍しくありません。
また、仮に「換金して現金で分けよう」となった場合でも、
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相続人全員が同じ証券会社に口座を作らなければならない
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換金した金額が相続人の所得となるため、完全な平等分配が難しい
などの手続き上のハードルも存在します。
(※こうした場合に平等に分けるための手法もありますので、詳しくは当事務所にご相談ください。)
母が証券会社に口座を残さなかったことは、結果として手続きの簡素化とトラブル回避に大きく貢献してくれました。
3.銀行口座の集約も大きな助けに
さらに母は、生前に銀行口座も整理してくれていました。
いくつかあった口座を一つにまとめ、
定期預金を解約してすべて普通預金に集約。
公共料金などの支払いもすべて自動引き落としに設定していました。
この際、私は車いすの母を連れて銀行に付き添い、手続きを進めました。
母は笑って「このお金でわたしのことはまかなってさぁ、足りんかったらヨロピク」と言っていましたが、
本当にプラスマイナスゼロできれいに終えた姿に、今あらためて「大した人だったな」と感心しています。
4.本人が自発的に動いてくれたことの意味
これらの終活の手続きは、すべて母自身の意思で進めたものでした。
私は「忙しいのに勘弁してよ~」と思いながら付き添っていましたが、
母のほうが積極的に「やらなきゃ」と思っていたようです。
ときにはテレビ番組で得た贈与税の知識を私に話してくることもありました。
(「お母さん、その話、誰にしてんの? あんたの娘、税理士やで?」と思ったこともあります。笑)
それでも、どこかで聞きかじった知識をきっかけに、
「きちんと整理しておかなければ」という思いを持ち、自ら動いてくれたことに、今は心から感謝しています。
まとめ
今回、母が元気なうちに証券口座や銀行口座の整理を進めてくれていたおかげで、
相続手続きが驚くほどスムーズに進みました。
相続手続きは、亡くなられた方だけでなく、残された家族にも大きな負担をかけます。
元気なうちに「できる範囲での終活」を進めることは、
何よりも大きな「家族への思いやり」になるのだと、身をもって実感しました。
相続や終活について、「何から始めたらよいかわからない」という方は、
ぜひお気軽にご相談ください。
専門家として、そして一人の経験者として、しっかりサポートさせていただきます。
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